ULシリーズ生産背景
普段、山中テント泊を楽しんでいて、「さらに軽量化を重視した山行を実施したい」という方に。
普段、ツエルトで山中泊を楽しんでいて、「場所を選ぶことなく、もっと素早く設営・撤収を済ませたい」そして、「軽量化は重視しつつ、より快適な居住空間を保ちたい」という方に。
ULシリーズは、防水透湿生地(耐水圧1,037mm以上・透湿性8,000mm)を使用した、超軽量(1人用で約680g)前室付きのシングルウォール「シェルター」です。あえて「テント」という言葉を使用しないのは、軽量化を第1優先とし、防水性・透湿性・耐風性に関してはある程度犠牲にして企画しているためです。
そういう意味で、ULシリーズは、それなりに、テント山行やツエルト山行の経験があり、上記のようなテントと比べて劣っている部分を受け止めた上で、メリットの方が大きいと判断ができる経験者向けのアイテムということになります。
このような要望に応えて企画したのがULシリーズです。
ULシリーズコンセプト
■ミニマム仕様の限られた条件下での最大限の居住性
①2人用で重量わずか745g!!この重さで自立式、しかも前室まで付属しているので、室内で不要なものを外に置くことができます。
②サイズは1人用が205×90×105cm・2人用が205×120×105cmです。このタイプのシェルターとしては天井の高さが余裕の105cmありますので、開放的な居住空間が得られます。
③前室付きという特徴上、前室部分はダブルウォール仕様になっています。これがなにを意味するか? →入口部分のテントパネルは防水生地ではなく通気素材なので(テントパネル全体の約30%を占めます)、ここからテント内の湿気を外に放出できます。ということは、このタイプのシェルターとしては結露を大幅に軽減でき、快適な居住空間が得られることになります。
④縫い目は全てシームテープ処理をしています。ツエルトよりも生地が弛みにくく、しっかり張れるので漏水対策の面でもツエルトより優れています。
⑤本体生地の耐水圧は、弊社生産テントのフライシートやボトムの生地と比べると20%程度劣ります。その代わりに、透湿性には優れています。我々がこの生地をチョイスした理由は、相反する理由で起きる「漏水」と「結露」のバランスを考えてのことです。防水性を高めることで透湿性を落ちると、激しい結露が生じシェルター内は漏水と同じような状況になります。さらに、通気性が悪いと、テント内で酸欠が起きる可能性もあります。防水性を抑えれば、確かに一定の雨が降ると漏水する可能性は否めませんが、ULシリーズにおいては防水性を抑える代わりに透湿性を上げた方が、トータル的には快適に過ごせるることが多いと判断してこのような仕様になっています。
■設営場所を選ばず、素早い設営と撤収が可能
①ツエルトと違い、自立するので、設営場所を選びません。森でも森林限界を超えた稜線でも、簡単に設営・撤収が可能です。
②ポールの四隅を本体の倒立スリーブに差し込むだけでポールが自立します。あとはフックを引っ掛ければもう完成。フラシートも無いので、慣れれば2〜3分で設営できます。テント、シェルター、ツエルトの類の中では最も設営・撤収がしやすい構造をしています。
■国産の強み
ULシリーズはポール・生地・ファスナーに至るまで修理対応が可能です(生地の劣化に関する修理は除きます)。テントやシェルターは、直接、自然の猛威にさらされるため、後々修理しなければならない可能性の高いギアです。国産の最大の強みは「購入後のアフターメンテナンスのしやすさ」にあると言えます。
■注意点
①ULシリーズは3シーズン仕様です。別売のフライシートや冬用の外張も接続できません。入口部には大きくはありませんが閉鎖不能のメッシュの強制ベンチレーションを設置してありますので、低温時にはテント内の保温が難しい構造となっています。
②ポールはDAC社の最軽量のNFL8.7mmを使用しています。このポールは強度よりも軽量化を重視しています。よって、本格的な強風化での使用には適していません。
③強い雨や連続する降雨などで、生地の許容範囲を超えると漏水の可能性があります。最初から大雨が予想される日の使用には適していません。
コラム
運悪く、このシェルターの限界を越える悪天に遭遇した時には、過去の経験・知識・体力を総動員してシェルターと力を合わせて危機を乗り越えなければなりません。その代わりに、多くの場合(特別な悪天候ではない場合)には、このシェルターを使用することで、「超軽量」・「快適空間」・「機動力」を手に入れることができます。登山を長年やっていると、自分にとって何が必要で、何が無くても良いのかがわかってきます。便利なものを全て担いでいけば確かに安心ですが、その分、重さでパフォーマンスが落ちてしまいます。実施する山行において、何が必要で何が不要かを見極める判断力こそが、装備の軽量化には重要なファクターになります。ULシリーズは、その判断をできる方のための製品です。