VELシリーズの特徴

- センターハブ
- テントの構造体としての剛性を高めるために、ポールの交差部をハブで半固定しました。部品はDAC社の「SwiveIH9783」を採用。

- スクリューフック
- テント本体とポールを接続する部品は、対抗する2本のフックを回転することで固定。

- 倒立スリーブ
- テント本体四隅は、スリーブによりポールを固定。剛性を高めながら、使用中に破損しにくい構造。

- テント内部シーム処理
- シーム処理をしにくい四隅部分も特殊な方法でシーム処理。

- 蓄光自在
- 光をあてると右画像のようにひかり、暗い中で他テントと見分ける目安になります。
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- ベンチレーション
- 外部との通気のためにベンチレーションを装備。雨風の強い日などに調整できるように絞りもつけています。
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- テント内部ベンチレーション
- 内部メッシュにも絞りを入れ調整可能。
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- ベルクロ仕様(内側)
- フライシートとポールをベルクロでしっかりホールドします。強風対策にも効果を発揮します。
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- 前室スペース
- 前室スペースは30cm、登山靴や炊事用具などを雨から守ります。
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- 強制ベンチレーション
- 必要充分な通気を得るために設置
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- 接続バックル
- 本体とフライシートを直線的に接続することでねじれが解消し、ポールの安定性が増しました。
(実用新案登録申請中)
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- コンパクト収納
- コンパクト性と軽さ重視のシンプルな収納袋。フライシートも専用収納袋付。
VELシリーズ生産背景
弊社定番のオールシーズン用テントはVLシリーズです。このテントを3シーズン仕様に変更して、不要な部分を削ぎ落として軽量化したテントがVELシリーズです。
「3シーズン用のダブルウォールテント(2人用)で1kgを切るテントを企画する」というのがVELシリーズの生産背景です。
最初から冬山のテント山行は考えておらず、無雪期に特化した山行でテントを使用したいという方達からの「オールシーズン用テントにない恩恵」、つまり「よりシンプルで軽量化を追求したテントを」、という要望に応えて企画しました。
2024年に発売しているオールシーズン向け2人用テント、VL-28の重量が約1,300gであり、これでも充分軽量テントといえる範疇です。ただ、今回企画するテントの目標は1kgを切るということが大命題でありますので、現状から実に300g以上の軽量化が必要となります。
まずは、強度を保ちつつ重量が軽い生地を捜し当て、約100gの軽量化を実現。ポールも強度は落ちますが約65g軽量化できるDAC社の最軽量ポールを採用しました。それでもまだ、約145g足りません。そこで、メッシュ生地を少なくし、ファスナーもより軽量なニットファスナーに変更、強度アップのための吊橋状メッシュを省き、フックの数も減らし・・・と削ぎ取れるところはどんどん削り、最終的に2人用で320gの軽量化に成功しました。こうして、2人用で本体重量が約980gというテントが完成したのです。
VELシリーズコンセプト
■3シーズン用テントとしては充分な機能性
水分吸水率の低さ(速乾性に優れ、濡れても重たくなりにくい)と紫外線劣化に強いという理由でフライシートとグランドシートには今までポリエステル生地を採用していました。今回採用した生地は「610ナイロン素材」です。この素材は、しわや型崩れが起きにくく、水分吸水率が通常のナイロンの約1/3とポリエステル並みであり、さらに、2024年生産のVLシリーズと比べ、フライシートで約20%・ボトム部分で約30%軽量化されています。さらに、引き裂き強度が約3倍という圧倒的な強度を実現できたことです。つまり、生地においては2024年生産のVLシリーズの強度以上のパフォーマンスを誇る素材であるということになります。
■軽量化に特化したことによるメリットとデメリット
吊橋状メッシュを省く、吊り下げフックの数を減らす、ポールを軽量化する、ファスナーをニットファスナーにするといったところは、強度的にはマイナス要因です。しかし、「3シーズン」という条件の中では、ここを削ったことにより得られる「軽量」というメリットの方がより大きいと判断しました。総合的に考えて3シーズン用テントとしては必要十分な条件を満たしており「より軽量なテントで軽快に歩きたい、3シーズン中心の登山者」の満足感が大きいと考え、VELシリーズの発売に至りました。
■軽量+居住性
超軽量テントは、軽量化を重視するあまりテントのサイズも小さくなりがちです。これは、テントを軽量化するのに一番簡単なのは小さくすることだからです。VELシリーズのサイズは1人用が205×90×105cm・2人用が205×120×105cm、この天井の高さが105cmというのが、超軽量テントとしては珍しく、開放的な居住空間が得られます。また、弊社のテントポールはサイズごとに全て共有が可能です。つまり、軽量化重視のテントに強度重視のポールを使用することも、またその逆の使用も可能ですので、テントを自分仕様にカスタマイズすることもできるのです。2024年7月に南米のアルパマヨに登頂した弊社のアンバサダーの片山氏は、弊社、VLシリーズのテントに、強度アップのためVSシリーズのポールをカスタマイズして遠征しました。
■素早い設営と撤収が可能
ポールの四隅を本体の倒立スリーブに差し込むだけでポールが自立します。あとはフックを引っ掛け、フライシートを被せればもう完成。慣れれば4〜5分で設営可能です。数あるテントの中でも、設営・撤収がしやすいという点では群を抜いているといえるでしょう。
■国産の強み
VELシリーズはポール・生地・ファスナーに至るまで修理対応が可能です(生地の劣化に関する修理は除きます)。テントやシェルターは、直接、自然の猛威にさらされるため、後々修理しなければならない可能性の高いギアです。国産の最大の強みは「購入後のアフターメンテナンスのしやすさ」にあると言えます。
■注意点
①VELシリーズは3シーズン仕様です。別売の冬用の外張も接続できますが、本体の入口部には大きくはありませんが閉鎖不能のメッシュの強制ベンチレーションを設置してありますので低温時にはテント内の保温が難しい構造となっています。
②ポールはDAC社の最軽量のNFL8.7mmを使用しています。このポールは強度よりも軽量化を重視しています。よって、本格的な強風化での使用には適していません。
コラム
現在、テントに関してメーカー各社が熾烈な軽量戦争を繰り広げています。ほんの数年前までは、2人用で1.5kgは「超軽量テント」と呼ばれていました。ところが最近は1kg以下のテントも増えてきて、1.5kgというのが標準的な重量となり、超軽量と1kg以下をいうようになってきました。
ここで気を付けなければいけないことは、「軽量化」とは、「何かを削る」ということです。使用するシチュエーションに合わせて削るのであれば、それは正しい削り方なのですが、削り方を間違えると、それはただ軽いだけで使いやすい製品とは言えなくなります。「適材適所」とよく言いますが、それを判断するのに長年の経験(失敗経験も含めて)がものをいいます。
HCSは前身の会社から含めますと約50年間にわたりテントを作り続けてきました。当然、様々な失敗やトラブルも経験してきています。その経験を生かして、現在があります。例え話になりますが、医者の世界でも「名医と呼ばれる条件は?」の問いに対する、最も重要なファクターは、「症例数」だということです。数をこなせば様々なトラブルにも遭遇します。それらの経験が名医を育てるということです。
HCSとしても、今後、さらに経験を重ねてより良い製品を開発していきたいと考えています。